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【アート 美】豊島横尾館 「死の祝祭」感じる空間

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【アート 美】
豊島横尾館 「死の祝祭」感じる空間

「母屋」と呼ばれる建物内は、大作を展示した圧倒的空間。正面は3連作「原始宇宙」、右は「宇宙的狂気愛」。ガラス張りの床下には川が流れている(いずれも大西正純撮影) 「母屋」と呼ばれる建物内は、大作を展示した圧倒的空間。正面は3連作「原始宇宙」、右は「宇宙的狂気愛」。ガラス張りの床下には川が流れている(いずれも大西正純撮影)

 つまりそこは死者のすみかだが、暗く絶望的な場ではなく、魅力的な魔界。「死は忌まわしいものでも悪でもない。祝祭としての死を表現した」。そんな横尾さんのコンセプトを、建築家の永山祐子さんが巧みに具現化している。

 館に入った途端、赤いガラスの向こうに“あの世”が見える。赤といえば、横尾さんが幼い日に見たという、戦火が染める真っ赤な夜空が想起される。いわば死の表象だが、同時に血潮がほとばしる生命エネルギーの表象でもある。

 建物内には横尾さんの平面作品が11点展示されている。まず、ピラミッド(クフ王の墓)を描いた赤い絵画「天ニアルモノヲ見ヨ」。暗い展示室を抜けると赤い石庭が広がり、鮮やかなタイルを敷き詰めた川(人工池)がある。敷地内には14メートルの円塔も増設され、横尾さんによれば「塔は男性原理、川は女性原理に見立てている」とのこと。「三途(さんず)の川であり、ナイル川であり、生まれたばかりの命を包む羊水でもある」。その言葉通り、開館時に川に放された鯉はいつの間にか卵を産み、数が増えている。「死から生が芽生えた」と横尾さん。

 「良き生き方が、良き死に方である」。生と死は実は表裏一体。肉体には限りがあるが、横尾さんはこの先も、死にながら生き続けるに違いない。

 瀬戸内海の島々を舞台に3年に1度開かれる、瀬戸内国際芸術祭の秋会期も始まったばかり。その会場である豊島には死ぬことと生きることに思いをはせる、ゆったりした時間が流れている。(黒沢綾子)

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