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【書評】皇學館大学教授、古事記学会代表・毛利正守が読む 『神武天皇はたしかに存在した 神話と伝承を訪ねて』 光る重層的取材と洞察力 

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【書評】
皇學館大学教授、古事記学会代表・毛利正守が読む 『神武天皇はたしかに存在した 神話と伝承を訪ねて』 光る重層的取材と洞察力 

『神武天皇はたしかに存在した』 『神武天皇はたしかに存在した』

 産経新聞掲載の「『海道東征』をゆく」は、熱心な古代史ファンはもとより、多くの読者からも大変好評を博した人気の連載である。今回、新たに「現代日本のはじまり」が「神武天皇と東征と即位にある」ことなどを記した安本寿久編集委員の分かりやすい序章が加わり、これまでの連載が待望の一冊となった。

 「神武天皇はたしかに存在した」という現実味をおびたタイトルをもつ。神武天皇は日向の国から東征をめざして海路は瀬戸内海、陸の安芸・吉備などを進み、いったん難波に着き、そこから紀伊にくだり熊野から大和を目指し、橿原で即位する。本書はその海道東征のロングジャーニーを描くものである。神武天皇とはいかなる天皇であったのか、取材班の地道な取材を重ねた説得力ある記事となって神武天皇像に迫っている。

 和銅5(712)年成立の古事記とそれより8年あとの日本書紀の記述をもとに、記者たちは神武東征の地を実際に訪ね歩き、記・書紀の記事にとどまることなく、その記述を生かすかたちでいまに残る伝承について現地のみなさんに丁寧に取材をしている。伝承を守り伝える地元の人たちの誇りが洞察力にすぐれた記事から浮かびあがり、これまでに知られている文献に加えて、より深みのある読み物となっている点が、多くの読者の共感を呼ぶことであろう。

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