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【書評】『トランプ現象とアメリカ保守思想』会田弘継著 理念追求の負担へ怒り表す

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【書評】
『トランプ現象とアメリカ保守思想』会田弘継著 理念追求の負担へ怒り表す

トランプ現象とアメリカ保守思想 トランプ現象とアメリカ保守思想

こうした中間層の心情を代弁してかつてブキャナンが、そしてトランプ自身も大統領選挙に出たことがあった。基本的にトランプはその時と変わっていない。アメリカ社会の方がワイマール化とも言われる不安定な状態にあることで、従来泡沫(ほうまつ)候補とされてきた彼が大きな勢力に押し上げられているとの見方は説得力がある。

 トランプ現象が最近50年間のアメリカ保守化に乗っていることは間違いない。しかし、彼は保守内の一部の心情に強く働きかけ応えているゆえに、正統な保守勢力を困惑させているとの指摘は興味深い。戦後冷戦期に保守派は思想的発展を遂げ多様な運動へと成長し大きな政府に反対する一方、対外的な介入をめぐり内部対立を深めている。選挙結果によってはトランプが危険な反動的差別心情を解放してしまう恐れもあると警告して本書を締めくくっている。トランプ現象が実は現代アメリカで進行している白人主流社会の転換期をよく映し出しているとの主張は傾聴に値するであろう。(左右社・1800円+税)

 評・金井光太朗(東京外国語大学教授)

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