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【話の肖像画】作家・村松友視(3)唐十郎を発掘した編集者時代

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【話の肖像画】
作家・村松友視(3)唐十郎を発掘した編集者時代

直木賞を受賞したときの祝賀パーティーで。前列中央が本人。唐十郎(右隣)もお祝いに駆けつけた =昭和57年(文芸春秋社提供) 直木賞を受賞したときの祝賀パーティーで。前列中央が本人。唐十郎(右隣)もお祝いに駆けつけた =昭和57年(文芸春秋社提供)

 だから初めて「海」に唐さんの戯曲「愛の乞食(こじき)」(45年)を掲載したとき、僕はこれは大勝負だぞと思いました。編集長からは「これは大丈夫ですか」という言い方をされたので、僕は「もちろん大丈夫です」と答えると、「じゃあ村松君を信用します」って冷ややかに念を押された。言い換えれば、自分は責任は取らないよ、ということだと思うんです。

 その号が出たあと、江藤淳さん(文芸評論家)が新聞の文芸時評で「愛の乞食」をとても褒めてくれた。面白くもない小説をいくつも掲載しているより、戯曲の掲載もいいんじゃないかと。僕と唐さんは首の皮一枚でつながったわけです。編集長も「江藤淳が褒めたならしようがない」となったわけで、あのときは本当に危ない橋を渡る気分だった。ところが、その後も僕は文壇外の人の作品を次々と手がけたので、「海」は「ヘドロの海」なんて言われたりもしました。あのとき、江藤さんが褒めてくれなかったらヘドロの海すらも成り立たなかったでしょうね。(聞き手 高橋天地)

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