産経ニュース

【話の肖像画】作家・村松友視(3)唐十郎を発掘した編集者時代

ライフ ライフ

記事詳細

更新

【話の肖像画】
作家・村松友視(3)唐十郎を発掘した編集者時代

直木賞を受賞したときの祝賀パーティーで。前列中央が本人。唐十郎(右隣)もお祝いに駆けつけた =昭和57年(文芸春秋社提供) 直木賞を受賞したときの祝賀パーティーで。前列中央が本人。唐十郎(右隣)もお祝いに駆けつけた =昭和57年(文芸春秋社提供)

 そのころアングラ劇団の「状況劇場」がクローズアップされていて、その主宰者の唐十郎さんに会ってみようと、東京・阿佐谷の稽古場に向かいました。劇団は古い家を借りて稽古場にしており、廊下の奥に書斎があってそこで唐さんが待っていた。白絣(しろがすり)を着て、むきたての卵のような皮膚をした人が座っていました。そのキラッと光る目を見たとき、これは天才だなあと思った。ビビっときましたね。唐さんと付き合っているときの充実感の源は常にそこにありました。唐さんと出会わなかったら、僕はもっと早く会社を辞めていたでしょう。

 「海」で唐さんの作品を起用した頃は、異種格闘技戦を仕掛けるような気分でしたが、僕が会社を辞めた後、唐さんが小説「佐川君からの手紙」(58年)で芥川賞を受賞してからは、他の文芸誌が唐さんの作品を掲載しても別に珍しいことでもなくなりました。でも最初、僕が唐さんの起用を提案したとき、もちろん編集長は反対でした。「唐十郎って何?」といった感じですね。文壇外の人といっても芥川比呂志さん(俳優、演出家、エッセイスト)に書かせるのは構わない。芥川賞と冠の付いた芥川龍之介さん(小説家)のご子息ですからね。でも唐さんはアングラ演劇界の人。会社は彼の対極にいるような作家ばかりを扱ってきたから、編集長は歯牙にもかけない。

続きを読む

「ライフ」のランキング