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【編集者のおすすめ】魂を震撼させる人間ドラマ『ラストナイト』薬丸岳著

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【編集者のおすすめ】
魂を震撼させる人間ドラマ『ラストナイト』薬丸岳著

「ラストナイト」 「ラストナイト」

 顔には刺青(いれずみ)、左手は義手。友人の営む居酒屋で傷害事件を起こして以来、自身の家族と別れ、32年の間に何度も犯罪に手を染めてきた男・片桐達夫。獣のような雰囲気は人を怯(おび)えさせ、刺青に隠された表情からは本心が全くつかめない。周囲の人々が片桐に対して抱くのは、怒り、悲しみ、後悔、そして-。全てを捨ててきた累犯者、彼が犯した最後の罪とは?

 本書は、2016年に『Aではない君と』で吉川英治文学新人賞を受賞したミステリー作家・薬丸岳の受賞第一作にあたる。江戸川乱歩賞を受賞したデビュー作『天使のナイフ』からのテーマ、「少年犯罪」に正面を切って取り組んだ前出『A』と今回の作品では、また異なった魅力が感じられるだろう。登場人物一人一人の人生ドラマと真実を探る謎解きの楽しみがぐぐっと凝縮され、抜群のエンターテインメントを味わえる一冊だ。

 本作ははじめから『ラストナイト』という名ではなかった。「月刊ジェイ・ノベル」連載時のタイトルは「檻(おり)から出た蝉(せみ)」。改題後に消えてしまっているものの、この「檻」という言葉は、物語を通して重要なキーワードとなっている。作品の性格上、タイトルに込めた意味についてここで多くを語ることは控えたい。しかし、「片桐はなぜ罪を犯し続けるのか」が明かされたとき、読み手は必ずはっと目を見開くことになるはずだ。薬丸岳によるプロフェッショナルなたくらみに、魂が震えること間違いなし!(実業之日本社・1500円+税)

 実業之日本社文芸出版部 砂金有美

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