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【世界勲章物語】金羊毛勲章 「欧州最高の格式」の数奇な運命 関東学院大教授・君塚直隆

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【世界勲章物語】
金羊毛勲章 「欧州最高の格式」の数奇な運命 関東学院大教授・君塚直隆

 音楽の都ウィーン。その中央部に建つ町の象徴ともいうべき聖シュテファン大聖堂で、今から5年前の2011年7月、ある一人の男性の荘厳な葬儀が営まれた。男性の名はオットー・フォン・ハプスブルク。通常はこの大聖堂で葬儀を執り行うことができるのは、元大統領級の大物に限られるが、98歳で大往生を遂げたこの人物はそれどころではない。世が世なら「オーストリア大公にしてベーメン国王、ハンガリー国王」、さらには「神聖ローマ皇帝」にもなっていたかもしれない、欧州随一の格式を誇る人物なのである。

 もちろんハプスブルク帝国は、第一次世界大戦での敗北とともに崩壊し、今や夢のまた夢である。亡くなったオットーも「一平民」にすぎないはずだ。ところがその葬儀には、スウェーデン国王夫妻、ルクセンブルク大公、リヒテンシュタイン侯爵など、錚々(そうそう)たる顔ぶれがそろった。厳かに執り行われた葬儀のあとで、故人の孫が黒いビロードのクッションに載せられた豪奢(ごうしゃ)な頸飾(けいしょく)を手に持ち、棺(ひつぎ)に付き従った。これこそ、これまた欧州で最高の格式を誇り、王侯たちの垂涎(すいぜん)の的となっていた「金羊毛勲章」の頸飾にほかならない。

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