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【書評】社会学者・古市憲寿が読む『シスト』初瀬礼著 「二重の絶望」スリリングに

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【書評】
社会学者・古市憲寿が読む『シスト』初瀬礼著 「二重の絶望」スリリングに

初瀬礼『シスト』(新潮社・1800円+税) 初瀬礼『シスト』(新潮社・1800円+税)

 最も起こってほしくない厄災-。世界規模と個人レベルの厄災が同時に降りかかってくる緊迫の社会派サスペンスだ。主人公は戦地取材もこなす36歳のフリーの女性映像ジャーナリスト。ロシア人の父は行方不明、日本人の母は早逝(そうせい)。そんな彼女が若年性認知症と診断されるところから物語は始まる。

 主人公は、やがては自らが被写体となることを覚悟して介護施設などへの体験取材を開始。病魔と闘いながら仕事を続けることを選んだが、次第に世界規模の事件に巻き込まれていく。それが、新型感染症の世界的流行、パンデミックだ。

 第三次世界大戦が起こる可能性は極めて低いとされる。世界は総力戦から、小規模な紛争とテロの時代に移行したからだ。その現代社会で最も恐ろしく、しかし現実的にあり得る厄災が、人為的な新型感染症の流行、つまり生物兵器を使ったテロだろう。作中、日本でも感染者が相次ぎ、実在する法律に基づく外出自粛令が発令される。日本にもそのようなルールが存在したのだ。

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