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【書評】大阪教育大学准教授・井上直子が読む 『三声書簡 1888-1890』 仏近代文学の第一級資料、詩壇の様子も詳細に描写

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【書評】
大阪教育大学准教授・井上直子が読む 『三声書簡 1888-1890』 仏近代文学の第一級資料、詩壇の様子も詳細に描写

三声書簡1888-1890 三声書簡1888-1890

 2004年にフランスのガリマール社から刊行された『三声の書簡1888-1920』は、ルイスとジッド、ルイスとヴァレリーの往復書簡を初めて網羅的に掲載した画期的な書物であり、本書はこのうち最初の3年分189通の翻訳である。

 ルイスの名は今ではあまり知られていないが、爆発的な人気を得た小説『アフロディテ』、ドビュッシーが曲をつけた散文詩『ビリティスの歌』は大正時代にすでに翻訳され、小説『女と人形』は映画の原案にもなった。本書でトリオの中心となるのはこのルイスだ。

 ジッドとの文通は時にスリリングで、『アラン』(『アンドレ・ワルテルの手記』として発表される)の執筆を始めたジッドに様々なアドバイスを贈るが、ジッドは譲らない。またルイスがユゴーを勧め、形式の重要性を訴えれば、ジッドはフロベールをたたえて美を重視する、というように両者の資質の違いもうかがえる。ついにルイスはアドバイスをいれないジッドに文通の中断を提案するが、『アラン』の完成を知ると今度は惜しみなく喜びを表す。一方でラマルチーヌの詩と称してユゴーの詩を送り、『アラン』とは似ても似つかない作品を「類似点がある」と勧めてジッドをかつぐ。

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