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【書評】詩人・佐々木幹郎が読む『清岡卓行の円形広場』(宇佐美斉著) 生涯を通じて波打つ「青空」

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【書評】
詩人・佐々木幹郎が読む『清岡卓行の円形広場』(宇佐美斉著) 生涯を通じて波打つ「青空」

「清岡卓行の円形広場」 「清岡卓行の円形広場」

 一人の詩人・小説家を論じるのに最もふさわしいのは、何よりもその詩人・小説家の作品を愛し尽くした人だ。その意味で、2006年に83歳で亡くなった清岡卓行の評伝の作者として、宇佐美斉ほど適任者はいないだろう。ランボー研究の第一人者である宇佐美氏は、20代のときから約半世紀にわたって清岡氏との交流が続いた。

 1950年代に出発した「第三期の詩人」と呼ばれる一群の詩人たちのなかで、清岡卓行の仕事は、詩以外に、小説、評論、随筆、紀行文など多彩なジャンルに広がっている。作者は実に丁寧に、そのすべての仕事に通底する基調音を聞き届けている。

 清岡氏の仕事には、中国の大連で「コロン(入植者)の子」として生まれたことが宿命のようにまとわりついていた。36歳で第一詩集『氷った焔』(1959年)を刊行。40代になったとき小説家としてデビューし、『アカシヤの大連』で芥川賞を受賞した。その後も詩や小説で大連が描かれるが、本書では、高校生のときの初期習作の一行詩、「わが罪は青 その翼空にかなしむ」が、生涯を通じて作品のなかに波打っていると読まれている。幼少期に大連で見た青空。「その青空は私の詩意識における、形而上的で甘味な地獄の予兆であった」と清岡氏自身も言う。

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