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【書評】ライター、編集者・南陀楼綾繁が読む『無限の本棚 手放す時代の蒐集論』(とみさわ昭仁著)

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【書評】
ライター、編集者・南陀楼綾繁が読む『無限の本棚 手放す時代の蒐集論』(とみさわ昭仁著)

『無限の本棚 手放す時代の蒐集論』とみさわ昭仁著(アスペクト) 『無限の本棚 手放す時代の蒐集論』とみさわ昭仁著(アスペクト)

羨望覚える率直な書物論

 うらやましいけれど、うらやましくない。それが本書を読んでまず感じたことだ。

 うらやましいのは、著者が本を集めまくった末に、神保町に〈マニタ書房〉なる古本屋を開いてしまったことだ。しかも、自分が愛する「変な本」だけを並べる店。

 商売として考えれば、あまりに偏った品ぞろえは客の幅を限定する。コレクターが蔵書を元に古本屋を開く場合、この壁にぶつかる。最初はマニアック全開の「濃い」棚だったのに、一般的に売れやすい本が増えていき、中途半端な印象になりがちなのだ。

 しかし、著者はライターの仕事を続けることで、マニアックな棚を維持している。本を買うことが書くことにつながり、著者の文章を読んで変な本を好む客が店に通ってくれる。一石二鳥の手法なのだ。好きなことを仕事にできていることに羨望を抱く。

 そして、コレクター気質を持つ夫を理解してくれる妻の存在もうらやましい。その彼女が病気で亡くなったことが、著者に古本屋の開業を決意させる。

 うらやましくないのは、コレクターとしての著者の人生だ。「酒ブタ」(一升瓶のキャップ)からはじまり、似顔絵、ダムカードなど、ひとたびスイッチが入るとその対象を集め続けてきた。それでも、「コレクター気質のない人間が思いつくことは、だいたいコレクターが考えており、すでに誰かが担当している」と著者は言う。「担当」って、誰が頼んだワケでもないのに、大変そうなのだ。

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