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【書評】ライター・編集者、樋渡優子が読む『日本を支えた12人』長部日出雄著

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【書評】
ライター・編集者、樋渡優子が読む『日本を支えた12人』長部日出雄著

日本を支えた12人 日本を支えた12人

 ■先人たちの勇気に深い敬意

 『「古事記」の真実』を始め、“日本人の源流”を精力的に探求する長部日出雄氏。今年82歳になる氏が、「この人たちがいなかったら、日本はなかった」と考える12人-聖徳太子、天武天皇、行基、聖武天皇、本居宣長、明治天皇、津田左右吉、棟方志功、太宰治、小津安二郎、木下惠介、美智子皇后陛下を取り上げ、その功績を読み解く。

 「和を以(もっ)て貴(とうと)しと成す」で知られる憲法十七条の「和」は、聖徳太子がどう発音したのか、誰もわからない。平安時代の読み方に従い、アマナヒ、ヤハラカなどと読まれてきたが、太子は「和(ワ)」に、日本を意味する「倭(ワ)」を掛けて音読させ、官僚をはじめとする知識人に倭国を誇りに思う気持ちを植え付けたのではなかったか? とすれば、憲法十七条は日本の独立宣言とも読める…と著者は推理する。さらに権威(天皇)と権力(武家など)を分ける世界でも類を見ない二重政治体制、神と仏の両方を受けいれた宗教的寛容さ、“極端に走らない中庸”が日本を外に開かれた、豊かな国にしたとも。

 歴史資料も豊富に出てくるので、歴史好きにも読み応えがあるし、日本の民主主義の発展なら、聖徳太子→津田左右吉→明治天皇と読み進めるうちに時代背景がわかる。興味のある章から人間ドラマとして楽しむこともできる。

 登場する12人に共通するのは「勇気」である。時代の潮目が変わるときに起こる嵐の中、声高に論を叫ぶより、石のようにじっと耐えて、自分の道を貫き通す勇気。いま私たちがいる日本は、ひとりでに日本になったのではなく、先人たちが命を張って守り抜いた文化や国風の証(あかし)であると気付かされる。

 紀伊国屋書店の高井昌史(まさし)社長によれば、8カ国27の海外店舗では、マンガや現代作家の作品に交じって、紫式部の『源氏物語』と関連書籍が外国人によく売れているという。日本人が何を大事にしてきたか、海外の人はちゃんと見ている。よい作家がたくさんいて、自由に、深い仕事ができることも、これすなわち“国の力”である。本書がその事実をよく表している。(集英社文庫・680円+税)

 評・樋渡優子(ライター、編集者)

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