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【編集者のおすすめ】豊饒な文学の森への案内状 『たった5行で読んだ気になる 日本の名作』

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【編集者のおすすめ】
豊饒な文学の森への案内状 『たった5行で読んだ気になる 日本の名作』

『たった5行で読んだ気になる 日本の名作』 『たった5行で読んだ気になる 日本の名作』

 かつて、「文学全集」というジャンルの本が書店の棚の相当部分を占めていた。それは、多くの家庭の本棚にもよく見られ、比較的安価で、日本の近代・現代文学の名作、作家の代表作が手軽に読めるので、文学青少年にとって格好の入門コースだった。教養としての読書が受け入れられた幸せな時代が終わり、活字離れが進んで、「名作」に触れる入り口を見つけることも、お気に入りの作品を探すことも難しくなっている。本書では、「井原西鶴から村上春樹まで」の古今の名作を、1作5行で要約するという離れ業をやってのけている。

 著者の一人は「小説天空の城ラピュタ」で一世を風靡(ふうび)した亀岡修氏だ。取り上げられた名作群には私が読んだものもあったが、読んだときの印象と違っていたり、記憶から抜け落ちた部分に気づくなどあって、正直言って驚いた。

 読んでいないもののなかにも、以前その存在を知ったときの受け止め方とは違う印象を感じるものがあった。

 最近、昔読んだ本をいくつか読み返して、以前とは違う感覚が働き、新たに発見することがあった。読書家としても知られる著者が言うように、読む年齢によって読み方、感じ方は変わる。

 若い読者には縁遠くなってしまった「名作」のなかには、さまざまなテイストがある。そのなかから気になるテイストを、引っかかりを、見つけ出してほしい。はまればそれは病みつきになる。引っかかりを探しやすいように砕いてくれた著者に感謝だ。(亀岡修、片桐卓也著/毎日ワンズ・1300円+税)

 毎日ワンズ編集主幹 山我浩

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