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【書評】早稲田大学教授・有馬哲夫が読む『戦地の図書館 海を越えた一億四千万冊』

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【書評】
早稲田大学教授・有馬哲夫が読む『戦地の図書館 海を越えた一億四千万冊』

『戦地の図書館 海を越えた一億四千万冊』 『戦地の図書館 海を越えた一億四千万冊』

 ■本をむさぼり読んだ米兵

 戦後70年が過ぎ、「戦争」がリアルな体験ではなく、高度に抽象化されたイデオロギーとして議論されるようになってきた現在、兵士の日常生活の実態を知ることの意義は大きい。

 アメリカ人の作者、モリー・グプティル・マニング女史が書いた本書は、戦場の兵士の実生活の意外な面をクローズアップしている。その意外な面とは、兵士が本を肌身離さず持ち歩き、戦場のいたるところで、あらゆる機会を捉えて、むさぼり読んでいたということだ。ここでの兵士とはヨーロッパ戦線と太平洋戦線のアメリカ兵のことである。

 その熱読ぶりは、彼らに、「兵隊文庫」(兵士用に作られた特別仕様の本)を供給した「戦時図書審議会」の人々の想像をはるかに上回るものだった。本が読まれなくなったといわれて久しいが、今の目から見ると、彼らの本に対する愛着ぶりには感動を覚える。何人もの兵士の手を経たため、ページは汚れ、ぼろぼろになっても、彼らはかならず尻ポケットに本を入れて戦場に赴いたという。「僕たちは、おばあちゃんを打(ぶ)つことなどできません。それと同じように兵隊文庫をごみ箱にすてることなどできないのです」とは、ある兵士の言葉だ。

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