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【書評】コラムニスト上原隆が読む『半席』青山文平著 絶妙の間合いの上司と部下

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【書評】
コラムニスト上原隆が読む『半席』青山文平著 絶妙の間合いの上司と部下

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 直木賞の『つまをめとらば』では夫婦生活のたいへんさが書かれていた。「普通の女」だと思っていても、結婚すると「普通の女」などいないことがわかる。そして、歳(とし)を取ると男同士の方がずっと気楽なことに気づく。だからだろうか、受賞後最初の本作は男同士の話となっている。

 魅力的な男が出てくる。主人公、片岡直人の上司、内藤雅之だ。この男、池波正太郎の小説の登場人物のように食べることが大好きだ。「鱈(たら)の胃袋の内藤唐辛子和(とうがらしあ)えだ、喰(く)ってみるかい」などという。

 2人は、幕府の御用を監視する徒目付(かちめつけ)という役についている。ほとんどの人がこの役目を出世のための踏み台と考えているか(直人がそう)、裏の仕事で私腹を肥やそうと考えているかのどちらかだ。が、雅之はそのどちらでもない。ガツガツしてない。釣りや食べ物の話をしてヘラヘラしている。

 〈武家が喰い物をうんぬんするのはいかがなものか〉と直人は思う。「旨(うま)いもんを喰やあ、人間知らずに笑顔になる」と雅之はいう。このあたりの2人の間合(まあい)がなんとも良い。

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