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【文芸時評 6月号】不機嫌なメッセージ 早稲田大学教授・石原千秋 

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【文芸時評 6月号】
不機嫌なメッセージ 早稲田大学教授・石原千秋 

石原千秋さん 石原千秋さん

 蓮實重彦の三島由紀夫賞受賞不機嫌記者会見が話題になった。賛否両論。社会人としてはアウトだが、芸術家としては「あり」だろう。蓮實重彦のメッセージは2つ。1つは「私を作家として扱うな」で、もう1つは「質問するなら私の本ぐらい読んでおけ」だろう。せめて『表層批評宣言』(ちくま文庫)一冊でも読んでおけばああいう事態にはならなかったはずだが、あれはあれで楽しめた。

 演出家の蜷川幸雄が亡くなった。ここ数年の舞台しか見てはいないが、どれも見せることに徹していて華があった。直木賞作家という感じだろうか。ただ、相性というものも感じた。昨年観た「太陽2068」(シアターコクーン)は、前川知大が蜷川幸雄演出のために『太陽』を書き直したバージョン。太陽の下で生きるキュリオが夜にしか生きられないノクスに支配される世界を美しく(?)見せた。一方、つい先日観た劇団イキウメの「太陽」(シアタートラム・前川知大演出)は小劇場の特質を最大限に生かした濃い舞台だった。芥川賞受賞作という感じだろうか。それぞれ見応えがあったが、この芝居は前川知大演出がいい。なんと言っても、役者の本気度がまるでちがった。

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