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【書評】編集者・ライター、月永理絵が読む『ゼロヴィル』スティーヴ・エリクソン著、柴田元幸訳

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【書評】
編集者・ライター、月永理絵が読む『ゼロヴィル』スティーヴ・エリクソン著、柴田元幸訳

ゼロヴィル ゼロヴィル

映画に溺れた男の冒険譚

 映画をめぐる小説といえばこの人をおいてほかにいない。長年雑誌で映画評を執筆していたスティーヴ・エリクソンは、過去の小説でもたびたび映画をテーマにしてきた。永遠に未完成の映画をつくり続ける映画監督が主人公の『彷徨(さまよ)う日々』や、架空の映画評を書くうちその映画が実在してしまう『アムニジアスコープ』など、どれも映画ファンにはたまらない内容だ。

 新作『ゼロヴィル』もまさに映画小説だ。1969年、神学校で建築を学んだ24歳の青年ヴィカーがハリウッドへやって来る。スキンヘッドに映画『陽のあたる場所』のモンゴメリー・クリフトとエリザベス・テイラーの顔を刺青(いれずみ)したヴィカーは、「映画自閉症」と呼ばれるほど映画への偏執狂的な愛を抱えている。編集技師として働きはじめた彼は、監督不在のまま出来上がった映画の編集を手がけ、その斬新な編集方法がカンヌ映画祭で賛否を呼ぶ。新作映画の監督にも抜擢(ばってき)されるが、彼自身は過去の映画フィルムに夢中になる。別々の映画フィルムのなかに共通する1コマが隠されていることに気づき、その秘密の映画の存在に魅せられていくのだ。

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