産経ニュース

【書評】脚本家、小林竜雄が読む『黄色いマンション 黒い猫』小泉今日子著

ライフ ライフ

記事詳細

更新

【書評】
脚本家、小林竜雄が読む『黄色いマンション 黒い猫』小泉今日子著

「黄色いマンション 黒い猫」書影 「黄色いマンション 黒い猫」書影

とっておきの打ち明け話

 小泉今日子さんは能天気な「なんてったってアイドル」を照れずに歌ってヒットさせた時、れっきとした“アイドル”であった。これでは最初から自分の立場に批評的にならざるを得ないだろう。それはいつも自分を外側から見るもう一人の自分がいるということだ。ここが聖子や明菜と違うところといえる。これは映画や舞台の女優になっていっても変わらない。その彼女も今年50歳の大台となった。

 本書はこれまで住んだ原宿や葉山、実家のあった厚木の日々を瑞々(みずみず)しい文章で振り返ったものだ。読んでいると彼女からじかにとっておきの打ち明け話を聞かせてもらっているような甘美な気持ちになっていく。特に原宿の街角や裏通りが生き生きと描写される。これはその場を楽しみ、遊んだ者ゆえの実感に裏打ちされているからだ。それでも書けることと書けないことがある。何人かの「ボーイフレンド」が出てくるのだがその細部は省かれているのでかえって妄想して年甲斐(としがい)もなくドキドキしてしまった。こんなことは久しぶりだった。彼女が愛した父についてはその早すぎる死の周辺のことがさりげないが触れてある。ここはあふれ出る想(おも)いを抑制する配慮があることでかえって悲しみが滲(にじ)み出ていた。

「ライフ」のランキング