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【書評】産経新聞上級専門委員、気仙英郎が読む『バルチック艦隊ヲ捕捉セヨ 海軍情報部の日露戦争』稲葉千晴著

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【書評】
産経新聞上級専門委員、気仙英郎が読む『バルチック艦隊ヲ捕捉セヨ 海軍情報部の日露戦争』稲葉千晴著

 興味深いのは英国政府が日英同盟の軍事協力に消極的だったのに対して、英国系新聞記者がバルチック艦隊の情報収集に協力した事例が明らかになった点である。当時の有力な情報源は欧州の新聞だったが、新聞情報だけでは足りないため、日本の外交官や海軍武官らはスパイを高額な報酬で雇った。そしてラトビアの海軍基地、マダガスカル、南シナ海、東シナ海など予想される敵艦隊の航路上に派遣した。雇われたのは同盟国日本を支援する英国系の新聞記者が多かったという。

 当時の情報収集には今では想像できないほどの困難と時間がかかった。日本がさまざまな情報を分析し周到な準備をしてきたからこそ、最終的に対馬海峡でバルチック艦隊を撃破できた。東郷長官ら日本海軍首脳は「敵を知り」勝算を持って戦いに臨んだ。「情報戦が勝因の一つであり、予算措置を含めた周到な準備が不可欠」との結論は今日の情報戦にもつながる貴重な教訓である。(成文社・3000円+税)

 評・気仙英郎(産経新聞上級専門委員)

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