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【書評】文芸評論家・細谷正充が読む『海は見えるか』真山仁著

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【書評】
文芸評論家・細谷正充が読む『海は見えるか』真山仁著

『海は見えるか』 『海は見えるか』

大震災-再生と成長の物語

 平成23年3月11日に起きた大地震と、それにより発生した津波は、東北から関東にかけて甚大な被害を及ぼした。いわゆる東日本大震災である。真山仁の最新刊は、その大震災後の東北の海沿いの町を舞台にした、『そして、星の輝く夜がくる』の姉妹編である。

 東日本大震災から1年。かつて阪神・淡路大震災で妻子を失った小野寺徹平は、神戸から派遣された応援教師として、遠間第一小学校の6年生を教えていた。震災後に世話になった自衛隊員とメールの連絡がとれなくなったことを悩む仲山みなみ。小学校を卒業するまでは遠間にいたいと、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を抱えながら頑張る庄司大樹。少年野球の大会を直前にして、引っ越すことになった栗田兄弟…。同僚の三木まどかや、浜登前校長たちに支えられ、ときに高圧的な校長と対立しながら、小野寺は子供たちの問題にぶつかっていく。

 大震災により家族を失ったり、生活を破壊された子供たちの心中は複雑である。懸命な大人たちの姿を見て、明るく振る舞っているが、なかなか現実と折り合いを付けることができない。たとえば仲山みなみの場合、小野寺の行動によって自衛隊員の消息を知るものの、それが彼女の苦悩を深くすることになるのだ。

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