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【書評】詩人、中原かおりが読む『おいしいもののまわり』土井善晴著

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【書評】
詩人、中原かおりが読む『おいしいもののまわり』土井善晴著

『おいしいもののまわり』土井善晴著(グラフィック社・1400円+税) 『おいしいもののまわり』土井善晴著(グラフィック社・1400円+税)

料理を超えて語られるもの

 料理本、食にまつわる随筆である。料理について書かれているのに、一つ一つ、滋味ある生き方を教わっているようにも思えてくる。32章全編から和食の芳香が漂ってもくる。

 著者はテレビでもおなじみの料理研究家、土井善晴さん。家庭料理研究の第一人者だった土井勝さんのご子息である。海外でフランス料理を学び、帰国後は老舗日本料理店で修業、その後「おいしいもの研究所」を設立して活動しながら、「家庭料理の視点から、命をつくる調理の普遍性を学んだ」と言う。

 料理人として全身全霊で食に向き合う真摯(しんし)な姿勢は、随所から伝わってくる。さらにこの本に通底しているのは、毎食食べる子の体調を思い、あたたかくおいしいものを食べさせたいという家庭における親の心である。

 つやつやでほんのりと温かいおひつのご飯。ノリを炙(あぶ)り、ゴマを炒(い)る。旬の魚の美しさ、果実の豊かな匂い。それら「美味(おい)しいもののまわり」には、おいしいものを一層おいしくするための道具や方法が存在する。お布巾(ふきん)・箸・まな板や包丁などの調理器具、調味料、器。火加減、塩加減、水の加減、吸加減(吸い物の味加減)、計量の仕方等々。それらが惜しげもなく饒舌(じょうぜつ)に語られている。

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