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【話の肖像画】無酸素登山家・小西浩文(4)間一髪の生と「相棒」の死

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【話の肖像画】
無酸素登山家・小西浩文(4)間一髪の生と「相棒」の死

相棒のロブサン・ザンブーさん(右)と=1996年秋、エベレストのネパール側ベースキャンプ 相棒のロブサン・ザンブーさん(右)と=1996年秋、エベレストのネパール側ベースキャンプ

 21日の朝、韓国隊のシェルパと上がってきたロブサンは、私の用意したお茶で体を温めると先に登り、私は15分ほど遅れて出発。事故が起きたのは1時間後です。

 フランス隊の1人を挟み、ロブサンと韓国隊のシェルパは70メートルほど先で、45度ほどの雪の斜面を横断していました。突然、ピーッというシェルパ特有の口笛が聞こえました。見上げると、走って戻ろうとするロブサンが見え、8千メートル地点から幅200メートルもの大雪崩が落ち始めていました。ロブサンは自分が巻き込まれようとするなか、危険を教えてくれたのです。

 瞬時に目の前の氷壁にへばりついた私の頭上を氷塊が飛び、大音響が続きました。なんとか直撃は免れましたが、3人が氷塊と一緒に約千メートル下に落ちました。約1時間で駆け下りて捜しました。でも、2人は遺体がありましたが、ロブサンはフェースマスクと少しの髪の毛しか見つかりませんでした。

 あとで聞くと、ロブサンは山麓にいるチベット仏教の高僧から今年はエベレストに行くのは危険だと警告されていたそうで、それでもやるなら頂上アタックの前に祈願するから下りてこいと言われていたそうです。彼はそのことを言わず、私の指示に従ったのでした。自分が生きるのに精いっぱいのときでも人を助けようとする「強い心」に今も感謝の念でいっぱいです。(聞き手 原田成樹)

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