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【科学】
水を球状炭素に閉じ込め 京大チーム、分子の動き観察
炭素原子が球状に結合した「フラーレン」に2個の水分子を閉じ込めることに、京都大の村田靖次郎教授(有機化学)らの研究チームが成功した。水分子の性質の解明や産業への応用が期待される。英科学誌の電子版に発表した。
チームは70個の炭素原子がラグビーボールのような形に結合したフラーレンを使用。化学反応で一部を切断し、高圧の状態で内部に水分子を入れて閉じ込めた。
水分子は他の物質と結合しやすいため、孤立状態にすることが困難で、性質の研究が遅れている。
チームは2011年、炭素原子60個でできたサッカーボール状のフラーレンに水分子1個を入れたが、内部の空間が狭く、動く様子などは観察できなかった。
今回は空間がより広いため、1個だけでなく2個の閉じ込めにも成功。水分子が単独で素早く動いたり、2個がくっついたり離れたりしている様子を確認した。次世代の太陽電池や医薬品の開発などに役立つという。
村田教授は「同じ手法でさまざまな物質を閉じ込めれば、電子材料などに活用できる」と話す。(草下健夫)