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【書評】文芸評論家・聖徳大教授、重里徹也が読む『アメリカ最後の実験』宮内悠介著

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【書評】
文芸評論家・聖徳大教授、重里徹也が読む『アメリカ最後の実験』宮内悠介著

『アメリカ最後の実験』宮内悠介著(新潮社・1500円+税) 『アメリカ最後の実験』宮内悠介著(新潮社・1500円+税)

 ■音楽の力を問う野心的小説

 新鋭の長編小説。器の大きな野心的な作品だ。音楽の本質を問う芸術小説とも、生きる目的を追い求める青春小説とも、アメリカという国を通して社会のあり方を考える文明論小説とも読める。

 といっても、しゃれた物語だ。全編にジャズが響き、味のある会話が楽しめ、人間模様は変化に富んでいる。

 主人公の青年は父親の行方を追って、アメリカ西海岸にある難関の音楽院受験に挑む。ピアニストの父親は妻子を捨てて、この音楽院に入学した後、消息を絶ったのだ。

 入学試験はユニークなもので、期間をかけて何次にもわたって実施される。この小説はその1次試験から最終試験までを描く。世界から若者たちが集まってくる。彼らを描きながら、物語はいくつかの重い問題を投げかける。

 とりわけ真正面から繰り返されるのは、音楽は世界を変えられるのかという問いだ。音楽は世界を意味づけられるかと言い換えてもいい。

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