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【書評】関西大学教授、堀潤之が読む『ゴダール原論 映画・世界・ソニマージュ』佐々木敦著

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【書評】
関西大学教授、堀潤之が読む『ゴダール原論 映画・世界・ソニマージュ』佐々木敦著

『ゴダール原論 映画・世界・ソニマージュ』佐々木敦著(新潮社・2500円+税) 『ゴダール原論 映画・世界・ソニマージュ』佐々木敦著(新潮社・2500円+税)

 ■独自の論理解く刺激的手引 

 フランスの映画監督ジャン=リュック・ゴダールはいまなお『勝手にしやがれ』や『気狂いピエロ』など1960年代のヌーベルバーグ作品で最もよく知られているかもしれない。だが彼はそれ以降も今日に至るまで、映画の可能性そのものを問い直すようなラジカルな映画作りを続けている。本書の主要部分は、2014年に83歳のゴダールが制作した最新長篇『さらば、愛の言葉よ』の透徹した読解から成る。

 この作品は3Dで撮られている。だが、「平らな平面なのに、平らでないように見せるなんてバカげてる」とうそぶくゴダールが、ハリウッド大作の『アバター』や『ゼロ・グラビティ』のような、没入感を強調する3Dの使い方を踏襲するはずがない。実際、この作品には、左右の目に差し出される映像がずれていき、その結果、激しい「視野闘争」をもたらすという実に奇怪な3Dの使用法が2度にわたってみられる。通常の立体視をもたらさないこの画面によって、ゴダールはどのように「映画」の知覚システムそのものを問い直しているのか。19世紀前半のステレオスコープや、デュシャンの錯視効果をめぐる試みにまで遡(さかのぼ)ってそのことを解明する本書の読解は実にスリリングだ。

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