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通い続けて15年、料理人が歩いたベトナム 高谷亜由著「水上マーケットの朝、アヒル粥の夜」

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通い続けて15年、料理人が歩いたベトナム 高谷亜由著「水上マーケットの朝、アヒル粥の夜」

『水上マーケットの朝、アヒル粥の夜 あっちこっちベトナム旅ごはん』高谷亜由著(幻冬舎・1200円+税) 『水上マーケットの朝、アヒル粥の夜 あっちこっちベトナム旅ごはん』高谷亜由著(幻冬舎・1200円+税)

 ベトナム料理が女性に人気といわれて久しい。フォー、生春巻きなど辛すぎないやさしい味付けや、野菜や香草をたっぷりと使い健康的な面がうけているそうだ。あっさり、ヘルシーなどと書くとのっぺりとした印象になるが、ベトナム料理は実に奥が深い。

 日本のように南北に細長く、郷土料理もたくさんある。麺料理だけを見ても、米麺、小麦粉麺のほかにタピオカ粉麺などの変わり種もあり、麺の種類だけで10以上、出汁や具の種類を加えれば数え切れないほどの料理が存在するという。

 加えて経済がぐんぐん成長中とあって街並みも飲食店も流行も訪れるたびに変化していく。その中で店構えや客の動きなど自分のカンだけを信じて美味しい店を見つけ出したときのうれしさはまた格別なものだ。

 筆者の高谷亜由さんは、京都で「料理教室Nam Bo」を営む。「Nam Bo」はベトナム語で南部という意味。15年前、大学生の頃に初めての海外ひとり旅で訪れたのをきっかけにベトナムにのめり込むようになった。

 ダナンとホイアンを3日間案内してくれたバイクタクシーの運転手と食べた朝ごはん、海辺を散歩してるときに初対面のベトナム人家族がご馳走してくれた魚のスープのおいしさが今も強く印象に残っている。ベトナム料理を生業とするに至るまでの原点になっているそうだ。

 終電で帰っても自宅で作れる手軽で簡単な料理を紹介した「終電ごはん」(共著、幻冬舎)、主宰する料理教室のレシピを集めた「ベトナムのごはんとおかず」(アノニマスタジオ)など味わい深いゆるさに定評のあるレシピ集を出してきたが、エッセイ集は初めて。

 飛行機が遅れても焦らず、そのおかげでいい景色が見れたことで“いってこい”とする。ベトナムで培われたその精神が、ゆったりほっこりとした自作の料理にも宿っているのだろう。エッセイは不安に満ちた女子大生が15年かけて自由気ままにベトナムのまちを闊歩するまでの“成長記”として読んでも面白い。

 旅の道中でつけた絵日記が紹介されているが、食材、料理のイラストとともに「かたくてかみちぎるのが大変やった…」「たかーい。でも楽しかったからいいか」などそのときどきの感想が綴られている。本当に楽しそうだ。

 おすすめの旅コース、携行品、荷造り、現地のホテル・飲食店、ベトナム料理の再現レシピもついており、ガイドブックとしても役立つ。ベトナム旅行のお供にもう一度ゆっくりと読みたい一冊だ。(幻冬舎・1200円+税)

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