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【書評】文芸評論家・友田健太郎が読む『異類婚姻譚』本谷有希子著 現代日本の男女関係描く芥川賞受賞作

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【書評】
文芸評論家・友田健太郎が読む『異類婚姻譚』本谷有希子著 現代日本の男女関係描く芥川賞受賞作

『異類婚姻譚』本谷有希子著(講談社・1300円+税) 『異類婚姻譚』本谷有希子著(講談社・1300円+税)

 ツルとかヘビとかキツネとか、人間以外のものと結婚する話は日本にも世界にも多い。第154回芥川賞を受賞した表題作のタイトル「異類婚姻譚」とは、そうした話を総称する言葉だ。だが主人公の女性「サンちゃん」が何と結婚していたのかはよく分からない。

 サンちゃんの旦那はサラリーマンだが、若くして高級マンション住まい。親の七光かと思いきや、血族は一切出てこない。どれだけ高給なのか。確かにどこか人間離れしている。サンちゃんはその怪しさに気付かず、「極楽」の主婦生活を送る。子供もおらず、あまりに楽すぎて後ろめたくなるような生活だ。「鶴の恩返し」のように、異類との結婚は富をもたらす。だが富には条件がある。

 鶴女房が「機を織っている姿を見ないで」と言うように、旦那も家では真面目な話は一切したくないと宣言する。その条件を守る限り、幸せは守られるだろう。

 だが、サンちゃんは現代女性なので、そんな生活には不安を抱く。サンちゃんの不安に呼応するかのようにして、旦那の変態が始まる。「お金をただ増やす」という資本主義そのもののようなコンピューターゲームに夢中になるかと思うと、揚げものに熱中。会社を早退し、さらには有給休暇を取って仕事を放棄、完全に主婦化してしまう。

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