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【産経抄】老いゆく高島平団地に人口減社会を憂う 2月29日

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【産経抄】
老いゆく高島平団地に人口減社会を憂う 2月29日

 先週土曜日付の小紙に掲載された2枚の写真は、歳月の重みを残酷なまでに映し出す。東京都板橋区にある「高島平団地」の同じ場所を撮影したものだ。

 ▼団地の入居が始まった昭和47年、赤ちゃんを抱き上げる母親の背景には、大勢の人の姿が見える。ところが44年後の現在は、つえをついたお年寄りが1人ぽつんと歩いているだけだ。

 ▼平成27年の国勢調査で、日本の総人口の減少が初めて確認された。かつての「東洋一のマンモス団地」の人口も、最盛期の半分になった。しかも高齢者が半数以上を占め、1人暮らしや空室も目立つ。まさに少子高齢化がさらに進んだ、日本の未来の姿である。

 ▼『絶品!東京リアルめし』というNHKの番組が先日、その一角にある交流施設を紹介していた。住民ボランティアが交代で、日替わりランチを提供している。耳が不自由で家に閉じこもりがちな90代の女性は、施設で食事をしながら筆談で会話するのが、何よりの楽しみだという。ランチ作りに参加して、初めて団地内で友達ができたスタッフもいる。

 ▼地方自治の取材で、20年間全国各地を歩き続ける相川俊英さんによると、地方の衰退は目を覆うばかりだ。「消滅可能性自治体」の表現もけっしてオーバーではない。ただそんな状況のなかでも、全国有数の高い出生率を誇る長野県下條村のように、活性化の成果を上げている地域がある(『奇跡の村』集英社新書)。

 ▼共通しているのは、国や自治体に頼らず、自分たちで自立をはかろうとする、住民の意欲と覚悟だ。「明るく楽しく生活する住民がたくさんいるところに、人は移り住むようになる」ともいう。高島平団地の再生も、まず住民の幸福感をいかに引き上げるかが、ポイントになる。

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