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【書評】桐朋学園大教授・西原稔が読む『『「聴くこと」の革命 ベートーヴェン時代の耳は「交響曲」をどう聴いたか』』(マーク・エヴァン・ボンズ著、近藤譲、井上登喜子訳)

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【書評】
桐朋学園大教授・西原稔が読む『『「聴くこと」の革命 ベートーヴェン時代の耳は「交響曲」をどう聴いたか』』(マーク・エヴァン・ボンズ著、近藤譲、井上登喜子訳)

『「聴くこと」の革命』(マーク・エヴァン・ボンズ著、近藤譲、井上登喜子訳/アルテスパブリッシング・2800円+税) 『「聴くこと」の革命』(マーク・エヴァン・ボンズ著、近藤譲、井上登喜子訳/アルテスパブリッシング・2800円+税)

 さらに、ベートーベンの交響曲第5番の最初の批評者であり、ベートーベンを「ロマン派」の作曲家として最初に位置付けたホフマンの論説の解釈などを通して1800年前後における感性のパラダイム転換を詳細に論じ、ベートーベンの音楽を支えた社会的な背景に論を展開する。

 市民社会の成熟と国家主義の高揚がベートーベンの作品受容を促していったとする著者の論述は実に説得力がある。終章ではハンスリックの「音楽美論」についての詳細な解釈を通して、芸術が社会や政治から超越した絶対的な高みに君臨するという、今日に至る思想の系譜を明らかにしている。

 文献資料を駆使した本書を読み進めることは容易ではないかもしれないが、濃密なその内容は実に啓発的である。高度な内容のこの書物を正確かつ分かりやすく訳出した近藤譲、井上登喜子両氏の仕事も高く評価したい。(マーク・エヴァン・ボンズ著、近藤譲、井上登喜子訳/アルテスパブリッシング・2800円+税)

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