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【文芸時評】2月号 小説は時代を映すか 早稲田大学教授・石原千秋

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【文芸時評】
2月号 小説は時代を映すか 早稲田大学教授・石原千秋

 「特集 継承される批評2016」(すばる)の、杉田俊介・藤田直哉・矢野利裕による「ブックガイド 近代日本の文芸批評を知るための40冊」が目配りが良くて、斎藤美奈子『妊娠小説』(ちくま文庫)も挙げている。これは「近代文学は、望まない妊娠をさせる物語ばかり書いてきた」と説くもので、文学理論の授業では構造分析がもっとも成功した例の一つとして必ず挙げることにしている。この40冊をいまの日本文学科の大学生が読んでほしいとは言わない。せめて、近代文学専攻の大学院生は読んでほしい。

 柄谷行人「批評にできること」(同、聞き手・高澤秀次)に、こういう一節があった。「ストーリーは構造に還元できます。たとえば、恋愛のストーリーはさまざまですが、僕の考えでは、恋愛は根本的に三角関係の構造においてある。だから、たとえ登場しなくても、第三者が隠れている。そういうことを『月山』を書いた小説家の森敦に言ったら、こう言われた。三角関係とはその一項が不在あるいは不可視であるような四角形である、と」

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