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【書評】なぜ人は人を助けるのか 精神科医、片田珠美が読む『だから人間は滅びない』天童荒太著

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【書評】
なぜ人は人を助けるのか 精神科医、片田珠美が読む『だから人間は滅びない』天童荒太著

『だから人間は滅びない』天童荒太著(幻冬舎新書・840円+税) 『だから人間は滅びない』天童荒太著(幻冬舎新書・840円+税)

 精神科医として診察していると、他者とできるだけ関わらないようにして生きている孤立した方に会うことが多い。人間関係で傷つき疲れ果てた結果、選択せざるを得なかった一種の防衛なのかもしれないが、こういう方ほど、本書の著者が指摘している「寂しいわきまえ」を持っているように見受けられる。

 「自分が手を差しのべないのに、他人にそれを求めることはできない」というわけで、一見立派に見えるが、自分が困った状況に陥っても、誰も救ってくれないという現実を引き受けなければならない。

 そうなると、何らかの問題に直面しても、助けを求めることさえできず、生き延びることが困難になるかもしれない。そこで、人々の孤立化の進行に危機感を覚えた著者が、さまざまな「つながり」を大切に育てている人やグループと対談した連載をまとめたのが本書である。

 被災地の子供支援、産後の母親ケア、障害者雇用など、さまざまだが、いずれにも共通しているのは人の志と熱意、そして善意である。ただ、著者の冷徹なまなざしは、何かの形で人を助けたいという、やむにやまれぬ感情で始めたにせよ、感情に動かされたらダメだ、という理性でコントロールする方向にもっていかないとうまくいかないことを見抜いている。

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