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【美の扉】恩地孝四郎展 そこはかとなく漂う「抒情」 東京国立近代美術館

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【美の扉】
恩地孝四郎展 そこはかとなく漂う「抒情」 東京国立近代美術館

恩地が装丁を手がけた「月に吠える」(萩原朔太郎著) 1917年2月15日発行 和歌山県立近代美術館

 とかく抽象画は冷たくて、とっつきにくいイメージがある。が、日本の抽象表現の先駆者の一人で版画芸術に大きな貢献をした恩地孝四郎の作品は、親しみやすく、優しく作品世界に導いてくれる。いま20年ぶりとなる回顧展が、東京国立近代美術館で開かれている。

 日本の抽象表現における最初期の一つとされる版画が「抒情(あかるい時)」だ。艶のある赤い画面の中に、いくつもの円弧がせめぎ合い、鮮烈で奥深い。

 恩地の作品は、直線が強調されるものではなく、むしろ曲線が目立つ。「春の譜」は、黒や茶色の3つの形で構成。現れた形態を何にたとえればいいのか、さっぱり分からない。イメージの源泉が植物なのか生物なのか、身の回りの物なのか。色彩は穏やかで形が響き合う。しっとりとしていて詩情にあふれている。

 恩地は大正3年、田中恭吉らと木版画と詩を掲載した同人誌『月映(つくはえ)』を刊行。自らが絵を描き、彫り、刷った創作版画によって版画芸術の地位を向上させ、後の世代に大きな影響を与えた。

 同美術館の松本透副館長は恩地作品について、「当時のヨーロッパの抽象画を見ても類例がない」と指摘する。それほど独自性があるということだろう。さらに恩地作品は「抒情」がキーワードだという。それはシリーズ作品のタイトルにもなっていて、確かに展示作品を見るとリリカルだ。

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