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【書評倶楽部】デザイナー・森英恵  センスを感じるメニュー『娘の味 残るは食欲』阿川佐和子著

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【書評倶楽部】
デザイナー・森英恵  センスを感じるメニュー『娘の味 残るは食欲』阿川佐和子著

『娘の味 残るは食欲』阿川佐和子著(新潮文庫・460円+税)

 好奇心と想像力で書かれた食のエッセーを、楽しく読んだ。話のタイトルにユーモアがあり、魅力的だ。

 「スキヤキスキスキ」-いかにも好きで、おいしそう。

 「ドバッとキャビア」-高価なもの、贅沢(ぜいたく)な!と思ったら、〈いただいたキャビアと到来物のシャンパンなので、私の出費といえば玉ネギとレモンとパンぐらいのものです〉。

 「カボチャイマジネーション」-〈カボチャはその姿を眺めているだけで、ノスタルジックな気分になる〉と。

 「切り干し大好き」-もちろん、切り干し大根! 確かにおいしい。

 カボチャや切り干し大根は、幼いころを過ごした郷里、母の手作りの味を思い出す。

 「生と缶」-〈ミカンは生より缶詰のほうが好きだった。なにより皮を剥かなくて済むから楽ちんである〉。思わず共感した。

 ひとり暮らしの阿川佐和子さんのライフスタイルは、現代の女性たちの生き方を表現していて面白い。

 特別に贅沢ではなく、ちょっと手を伸ばせば食べられそうなセンスを感じるメニューである。

 「孤独グラス」-〈友達が一人二人、遊びに来るくらいの夜がたまにはあるけれど、ワインでパーティをする予定や気力はいっさいない。だからグラスは二つでじゅうぶんだ〉。そんな気分もよくわかる。

 食べることは、着ることや眠ることと同じように、日常の生活の中の三大事だと思う。とくにおいしいもの、フレッシュな季節のものが、元気には“いちばん”と感じている。

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