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【書評】神戸大名誉教授・吉田一彦が読む『ナチスの楽園』(エリック・リヒトブラウ著、徳川家広訳)

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【書評】
神戸大名誉教授・吉田一彦が読む『ナチスの楽園』(エリック・リヒトブラウ著、徳川家広訳)

 □『ナチスの楽園 アメリカではなぜ元SS将校が大手を振って歩いているのか』

元ナチを重用した戦後米国

 本書の原題は『隣人としてのナチス』であるが、『身近にいるナチス』としてもよい。第二次大戦後、本来なら戦争犯罪人として裁かれるはずのナチス残党の多くがアメリカに逃れ、身分を隠し善良な市民として平穏な生活を営んだという事実があった。中には地域の有力者として住民の尊敬を集める者もいた。アメリカ司法省の記録によると、「迫害された者たちにとっての安全な避難場所であることを誇りにしてきたアメリカは、少数の事例であるとはいえ、迫害者にとっても避難所となっていたのである」。

 この原因の一つは「紙クリップ作戦」にある。これは大戦末期から戦後にかけて、ドイツの優秀な科学者をアメリカに連行する作戦であった。アメリカの利益になるのであれば、ナチス時代の前歴は問わないという現実主義に基づく計算があった。著名な存在としてはアメリカ初の人工衛星打ち上げなどに大きな貢献をしたロケット工学者、フォン・ブラウンがいる。

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