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横尾忠則さん「幻花幻想幻画譚」 挿絵のあり方を超えて

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横尾忠則さん「幻花幻想幻画譚」 挿絵のあり方を超えて

瀬戸内晴美「幻花」挿画 虚空(八)1974~75年 作家蔵

 美術家、横尾忠則さん(79)によるグラフィックの傑作が、約40年ぶりに作品集という形でよみがえった。このほど出版された『幻花幻想幻画譚(げんかげんそうげんがたん)』(国書刊行会)。もとは作家、瀬戸内寂聴さん(93)が昭和49~50年に新聞連載した時代小説『幻花』のために、横尾さんが描いた挿絵だ。合わせて、その全原画371点を展示する企画展「幻花幻想幻画譚」(産経新聞社など主催)が横尾忠則現代美術館(神戸市)で開かれている。

 『幻花』は室町幕府8代将軍、足利義政をめぐる正室・日野富子と妾のお今(いま)の抗争を主軸に、乱世の時代を主人公の女性、千草の視点で描いた長編。既に出家得度をするも、まだ旧名の瀬戸内晴美だった寂聴さんは歴史文献を基に自由に想像をふくらませ、虚実入り交じるドラマチックな物語をつくりあげた。しかし、自由奔放さでは横尾さんも負けていない。寂聴さんは今回の作品集に収録された自身のエッセーの中で、こう回想している。

 〈せっかちな横尾さんは、私の原稿を待ちきれず、さし絵を勝手に描いて新聞社に届けてしまう。たいていのことに驚かない私も、突然、UFOの絵が届いた時には絶句してしまった。(略)鉄砲もない時代にUFOとは!〉

 対して横尾さんは昨年12月、展覧会開幕に合わせたトークイベントで「寂聴さんにつかず離れずにいて、自分の世界を表現したかった。一応原稿は読んだんですが…」と証言。庭をはう白蛇や河原の風景、切腹したお今の生首が跳ぶシーンなど物語と連動する挿絵もあれば、ほとんど脈絡なく宇宙空間が出てきたり、寂聴さんの顔が登場したり。文章と挿絵は確かに、つかず離れずの関係になっている。挿絵を引き受けるにあたり、横尾さんは「自分のイラストレーションの総決算に」と意気込んだという。文章に従属する挿絵のあり方から、あえてはみ出そうとした。

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