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【書評】文芸評論家・聖徳大教授の重里徹也が読む『空海』高村薫著

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【書評】
文芸評論家・聖徳大教授の重里徹也が読む『空海』高村薫著

『空海』高村薫著(新潮社・1800円+税)

軌跡を追体験 深まる思考

 今年は空海が高野山を開いてから1200年目になる。弘法大師の名で尊崇される真言宗の開祖は、日本思想史に輝く天才的宗教者であり、卓抜な実行力を持つ社会事業家でもあった。

 その存在と思想の現代的意味とは何なのか。作家は空海の著書を読み解き、足跡を訪ねる旅を続ける。

 司馬遼太郎の「空海の風景」は、空海の後ろ姿を追い、上下から眺め、その周辺を探る。超人的な頭脳とともに、アクの強い性格や優れた政治感覚も浮き彫りにしていた。一方、高村薫は正面から空海の思想をかみ砕こうとし、高野山や四国を歩きながら、空海の軌跡を追体験しようと試みる。両方読むと味わいが深まる。

 高村の本では、空海独自の密教世界は「日本古来の自然やアニミズムを滲(し)みこませた身体の直接体験と、中国語の論理や修辞が合体したとき」に開かれたとしている。このこともあって、庶民に信仰が広がったのだというのだ。

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