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【国語逍遥(66)】清湖口敏 「慣れ」とは恐ろしいもの 漢字の書き換え

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【国語逍遥(66)】
清湖口敏 「慣れ」とは恐ろしいもの 漢字の書き換え

どちらの漢字を使う方がいいか どちらの漢字を使う方がいいか

 近頃では、戦前の文学作品に出てくるaの表記を誤植と勘違いする人も多いに違いない。しかしbがこれだけ国民の間に定着したいまとなっては、さすがに新聞もaには戻せないし、戻せば混乱が生じるだけだろう。

 慣れというのはつくづく恐ろしいものだと思う。昭和30~40年代の横綱大鵬の全盛時、画数が多くていかにも難しそうな鵬の字を小学校の低学年生がいとも簡単に読んだり書いたりし、教師を驚かせた。解字(月+月+鳥)の助けがあったとはいえ、テレビや、当時は飲食店などの店先に貼られていた大きな星取表などによって、鵬の字はいやでも子供の目に焼き付くことになったのである。

 どんな難字でも頻繁に目にするうちには、誰もがきっと自然に覚えてしまう。いま産経がルビ(振りがな)付きで書く「漏洩(ろうえい)」や「改竄(かいざん)」を「漏えい」「改ざん」と書く新聞もあるが、こんな交ぜ書きを長く見せ続けられたのでは、読者は気の毒にも本来の漢字を知る機会を失ったままとなる。

 近い将来、世論調査の質問で「どちらの字がいいと思うか」と尋ねられたとき、「漏洩」より「漏えい」を、「改竄」より「改ざん」を選ぶ人の方が多くなりはしまいかと、心配するのは私だけだろうか。

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