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【国語逍遥(66)】清湖口敏 「慣れ」とは恐ろしいもの 漢字の書き換え

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【国語逍遥(66)】
清湖口敏 「慣れ」とは恐ろしいもの 漢字の書き換え

どちらの漢字を使う方がいいか どちらの漢字を使う方がいいか

 9月に公表された文化庁の「国語に関する世論調査(平成26年度)」の結果については新聞各紙がさまざまな角度から分析し、紹介していた。ここでは新聞がほとんど取り上げなかったデータに焦点をあて、戦後の国語施策が国民の漢字使用の習慣にどのような影響を与えたかを考えてみたい。

 調査では、「潰滅か壊滅か」「肝腎か肝心か」など2通りの書き方を挙げ、「漢字に直すとしたら、どちらの漢字を使う方がいいと思うか」と問うており、結果の一部はグラフに示したとおりである。aの潰、腎、汎、窟は平成22年に常用漢字に加わったにもかかわらず、bと答えた人が圧倒的に多い。

 aとbのそもそもの因縁は昭和21年にまでさかのぼる。同年に公布された当用漢字表は、公用文書はもちろんのこと新聞、雑誌なども表内の1850字(表内字)の範囲内で書くように求め、表内にない漢字(表外字)を含む言葉は別の言葉に言い換えるか、かな書きにするしかなかった。

 その後、当用漢字の適用を円滑にするため国語審議会が31年、表外字を含む漢語などの書き換えを「同音の漢字による書きかえ」として決定し、報告した。潰滅→壊滅、肝腎→肝心、広汎→広範、理窟→理屈の書き換えは、これによるものである。ほかにも日蝕→日食、褪色→退色、庖丁→包丁など多数ある。はて、包丁の包っていったい何なのだろう。厨(くりや)(台所)の意の庖を使ってこその調理具ではないのだろうか。

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