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【東北点景 それから番外編(下)】小さな実践の中で見えてくるもの 民俗学者・赤坂憲雄さんに聞く

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【東北点景 それから番外編(下)】
小さな実践の中で見えてくるもの 民俗学者・赤坂憲雄さんに聞く

宮城県南三陸町の水戸辺漁港で

 岩手県釜石市から福島県いわき市まで、海岸線を3日かけてたどりましたが、どこもかしこも工事現場でしたね。それぞれの土地で細かい違いは見えても、結局、大きな復興の理念というのは、どこにもないんだなと感じました。

 私自身、震災直後に政府の復興構想会議に2カ月ぐらい関わりましたが、理念というものを語り合う前の段階で会議は閉じられた。その後も、大きなビジョンが掲げられるようなことはなかった。4年半が過ぎたけれど、巨大な防潮堤の内側に暮らす人たちを支える、自治と自立のよりどころになるようなものは、まったく見えてこない。

 それでも、動き出している人々の姿はあります。今回もいろいろな人に会って話を聞きましたが、釜石で水産加工に携わる若い経営者の言葉が印象的でした。彼の会社は津波にのまれたんですが、チャンスだと思ったと言うんです。これだけの災害が起きたんだから、いろんなことを根底から変えるチャンスだと思った。ただ、試みは何ひとつうまくいかなかった、と正直に話してくれました。

 だからいまは、大きな変化を目指すのでなく、ひとつでもふたつでも、自分のできる小さな成功モデルを作ることを考えている、少しずつ進んで行くしかないと思ってやっている、という。そう聞いて、とても共感できました。

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