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綿矢りささん新刊「ウォーク・イン・クローゼット」 消費社会の悲哀、軽やかに

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綿矢りささん新刊「ウォーク・イン・クローゼット」 消費社会の悲哀、軽やかに

収録作の執筆のために陶芸家を取材。「その職業に夢中になる理由、魅力が伝わってきた」と話す綿矢りささん

 男性好みの服で“武装”するOLに、女ストーカーの影に悩む新進陶芸家。綿矢りささん(31)が2年ぶりの新刊『ウォーク・イン・クローゼット』(講談社)で、哀切でコミカルな人間の姿を描いている。ドライブ感のある文章がさえる軽快な作品集には、現代に向ける作家の鋭い視線も息づく。(海老沢類)

 平成25年以降に発表した2編を収める。男性受けのいい清楚(せいそ)系ファッションが似合う28歳のOL・早希と、洗練された一流の服に囲まれて暮らす人気タレント・だりあ。表題作では、幼なじみ2人のままならぬ恋愛と複雑な友情、有名人のだりあを窮地に追い込む騒動の顛末(てんまつ)をつづる。

「対男」の戦闘服

 「今、物がめっちゃあふれてますよね。個人の表現として何かを選ぶセンス、そして選ばないセンスが重要になっている。最初に浮かんだのは、クローゼットを開けたら洋服の代わりに男の人が並んでいるイメージだった」と綿矢さん。タイトル通り、衣服が“主役”の物語でもある。

 大失恋を経験した早希は新たな恋を求めていろんな男性とデートを重ねる。〈私たちは服で武装して、欲しいものを掴(つか)みとろうとしている〉。クローゼットに並ぶ〈対男用〉の服を、場や相手に応じて使い分けるけれど、逆に見かけだけで判断する男たちの無神経な言動に傷つけられる。ファッションやしぐさといった表層のイメージをひたすら交換し合い、日々を生き抜く-。浮かび上がるのは、物や情報があふれた高度消費社会に身を置く現代人のそんな哀しくもおかしな姿だ。

 「『自分が好きか』より先に『人にどう思われるか』を考える。そうして作られる外見って、もろいと思うんですよね。そのもろさが人間くさいから私は好きなのかもしれない。全方位に好かれることを追求して何かが空虚になっていく…その感じを書いてみたかった」

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