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【書評】拓殖大総長、渡辺利夫が読む『暦で読み解く古代天皇の謎』大平裕著 日本書紀の暦年計算法発見

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【書評】
拓殖大総長、渡辺利夫が読む『暦で読み解く古代天皇の謎』大平裕著 日本書紀の暦年計算法発見

『暦で読み解く古代天皇の謎』

 私どもは歴史という時間軸の中を生きている。私の生年は昭和14年だが、この年はどういう歴史を紡ぎ上げて成った年なのだろうか。昭和の前に大正がありその前に明治があってと、時代をどんどん遡(さかのぼ)っていくと一体どこに行き着くのだろうか。天皇は現憲法では「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」であるが、しかし、それより前に日本の連綿としてつづく「歴史の象徴」として人々に長く意識されてきたのに違いない。

 とすると、天皇の治世によって区分される時代はどこまでその淵源(えんげん)をたどればいいのか。このことは歴史研究者はもとより市井の人間にとっても大いなる関心事でなければならない。なぜならそれが日本人としてのアイデンティティーの淵源の、少なくとも重要な一部だからである。しかし、まことに不愉快にも、津田左右吉(そうきち)氏の学説を権威として崇(あが)める日本の古代史家は、『古事記』を文学書、『日本書紀』を天皇の統治を正当化するための「造作」の書だとし、古代史を古墳時代といったまるで生気の失(う)せた用語法で一括(くく)りにしてしまった。この時代を生きた多くの天皇たちの存在とその治世のありようを今に甦(よみがえ)らせようという関心は絶えたままなのである。

 著者の5冊目となる古代史シリーズの本書は、暦という歴史の時間軸を措定(そてい)する場合の不可欠の観念が、日本でどのようにして始まったのかを探ろうという野心作である。

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