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【編集者のおすすめ】『第3次世界大戦の罠 新たな国際秩序と地政学を読み解く』佐藤優、山内昌之著

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【編集者のおすすめ】
『第3次世界大戦の罠 新たな国際秩序と地政学を読み解く』佐藤優、山内昌之著

(徳間書店・1500円+税)

地政学から世界の火薬庫を読む

 動乱の時代に突入した国際社会を問う上で、最高のタッグではないだろうか。戦後70年首相談話にも助言した中東ロシア研究を専門とする歴史学の泰斗と、外交の最前線で命懸けのインテリジェンスに従事した最強外交官。2人による濃密な対話は、たまらない知的刺激に満ちている。

 IS(イスラム国)の勃興と蔓延(まんえん)、ギリシャの破綻危機、中国の南沙諸島進出、EUを支配するドイツの台頭、ロシアのウクライナへの攻勢、アメリカとイランの急接近…世界を揺るがすさまざまな事象には、中東・イスラム圏が何らかの形で介在する。この地域が欧州とアジアを結びつける触媒として機能したことに加え、オスマン帝国滅亡後、独善的な国境線が引かれたことで民族・宗教が分断されたことなどへの論及は、この地が衝突点・発火点として歴史的にいかに宿命づけられたのかを明らかにする。

 また特筆すべきは「地政学」(ヒトラーが使ったことなどから「悪魔の学問」とも称された)という補助線から諸問題を分析したこと。地政学が示すのは文字通り「地の理」であり、歴史に比べて変化の少ない要素だ。世界的な動乱の基盤を地理から読むことで、背景の理解はさらに深まってくる。農業的にも資源的にも肥沃(ひよく)で地理的利便性もあるこの地域をめぐって、いまなお大国の思惑、諸民族・宗派の主張が交錯するのは当然なのだろう。世界大戦に引火しかねない対立のマグマの実態と理由をぜひ本書から把握してほしいと思う。(徳間書店・1500円+税)

 徳間書店学芸編集部 加々見正史

 

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