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【グローカル!】群馬・嬬恋 供養続け230年、住民の絆

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【グローカル!】
群馬・嬬恋 供養続け230年、住民の絆

鎌原観音堂の石段は地面の下にさらに35段分が埋まっており、逃げ遅れた2人の遺骨も発掘調査で見つかった=平成26年9月、群馬県嬬恋村(鎌原観音堂奉仕会提供)

 ■大噴火の教訓、村に息づく

 住民一人一人が災害に強いまちづくりを意識し、防災や減災に率先して取り組むことは、地域の自立を促す大きな力にもなる。200年以上も前にさかのぼる浅間山大噴火の教訓を今も忘れず、住民同士の絆づくりにも役立てているのが群馬県嬬恋村。地方創生に向けた注目すべき試みといえそうだ。(牛田久美)

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 日本の火山災害史上最大級ともいわれる天明3(1783)年の浅間山大噴火。麓の鎌原(かんばら)村(現在の嬬恋村鎌原)は、大規模な土石なだれでほぼ全域が埋没した。嬬恋郷土資料館によると、鎌原村の人口570人のうち477人が死亡。生死を分けたのは村の高台にある鎌原観音堂への避難だった。

 嬬恋村の関係者によると、噴火直後、救援物資を持って駆けつけた人々もいた。江戸の寛永寺から故郷の信州善光寺別当に就任した等順の一行だ。犠牲者名を記録し、毎日、村人と念仏を唱え、「残って生きた人の心の安住に心血を注いだ」という。「血脈譜」と呼ばれるお守りも授けた。

 当時は大飢饉(ききん)も深刻だった。等順は全国をめぐり、浅間山の出来事と“備え”の大切さを民衆に語り、自然への敬意、信仰の大切さを津々浦々に広めるのに一役買ったという。京都の御所でも奏上した。等順が授けた血脈譜も評判となり、全国から善光寺へ参拝者が血脈譜を求めて集まった。血脈譜は180万枚に達し、落語『お血脈』の題材となった。

 善光寺長臈(ちょうろう)の村上光田大僧正は「鎌原の被災者の供養が現在の御開帳に発展した。自然は何が起こるか分からない。いつも心に準備し、助け合い、優しい慈悲の心で人に接し、物事に対処することが大切だと、等順さまから教わったのでしょう」と語る。

 村上大僧正は今年8月、大噴火の犠牲者を弔う233回忌に観音堂を訪問。地元の常林寺の高橋邦光住職らとともに読経し、「土石なだれがここまできたのかと驚いた。まさに大噴火。現地では、相当な悲しみが今日(こんにち)も続いている」と語った。

 生死を分けた高台への避難と等順らによる支援の輪。生き残った村民は教訓を心に刻み、再び同じ場所に戻って村の自立再建を果たしたという。現地では今もなお毎日交代で230年以上供養を欠かさない。嬬恋村は大噴火の体験を供養で共有することで、共同社会の絆を築いてきた。こうした一連の取り組みに地域防災のヒントがある。

 嬬恋村は8月、全国初の噴火に備えたタイムライン(事前防災行動計画)を策定すると発表。村民と村内外の関係者、有識者らが今年度内に、想定される噴火シナリオ別に回避行動、役割分担を明確にするのが狙いだ。民生委員や婦人会が実際に歩いて、避難路の課題を洗い出している。

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 ■地盤の状況、ネットでチェック

 災害に強いまちづくりは住民の自助努力から。例えば、自宅の地盤の状況はインターネットで確認できる。活用してみてはどうだろう。

 住所を入力するだけで災害リスクがわかる無料サイト「地盤カルテ」(http://jibannet.co.jp/karte/)のアクセスが、茨城・鬼怒川の堤防決壊や横浜市のマンション傾斜などの報道のたび増えている。

 カルテは全国が対象で、入力した住所の改良工事率や浸水リスク、地震の揺れやすさ、液状化リスクなど5項目を点数化する。

 カルテを監修する「地盤ネット」の横山芳春執行役員(37)は「戦後の開発でリスクが見えなくなった。広島市の寺に伝わる土砂災害現場付近の旧地名は『蛇落地悪谷(じゃらくじあしだに)』。人は住めないという先人の知恵だった」と語る。戦後開発された土地は湿地や海岸を埋め立てたりして、人気の土地ほど実は危険な例も多いという。

 山本強社長(49)は「災害のたび、知っていたら住まなかったという声がある。不動産売買は家屋、土地、地盤の3点で判断しよう。そうすれば危険な物件は淘汰(とうた)され、資産評価は塗り変わる。価値の転換で人命を守りたい」。

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