産経ニュース

【東北点景 それから】(30)ヨシ原の営みを取り戻す 宮城県石巻市・かやぶき屋根工事の熊谷秋雄さん(51)

ライフ ライフ

記事詳細

更新

【東北点景 それから】
(30)ヨシ原の営みを取り戻す 宮城県石巻市・かやぶき屋根工事の熊谷秋雄さん(51)

宮城県石巻市の熊谷産業社長、熊谷秋雄さん(51)。事務所は茅葺き壁!

 北上川河口には広大なヨシ原があって、祖父が、刈られたヨシを屋根材の茅(かや)として販売する仕事をしていました。小さいころから手伝っていて、きつい仕事だしやりたくないと思っていたんですが、海外で働いたりするうちに興味を持つようになって、かやぶき職人に弟子入りしました。それが20年ぐらい前。

 かやぶき屋根がどんどん消えていた時期で、需要がないから職人も減って、ヨシ原も荒れていた。そんな中でかやぶき屋根工事の会社として法人化して、若い人も雇った。世間の逆ですが、そうしたら県外からも仕事を頼まれるようになった。試行錯誤しながら今日まで続いてます。うちの強みは、自分のところに材料があったこと。瓦やトタンと違って、電話して追加…とはいかない仕事ですから。それも、震災でなかなか思うようにはできなくなったんですけれど。

 津波で会社は集落ごと流されました。いまの事務所は震災前に倉庫だった建物で、周辺も3週間ぐらいは水が引かなかったんですが、修理して3月の終わりには仕事を再開しました。冬に刈り入れたばかりだった茅も流れましたが、青森や栃木や京都の同業者が分けてくれた。みんな茅不足で大変なのに。本当にうれしかったですね。

 いま取り組んでいるのは地元のヨシ原再生です。ボランティアさんに手伝ってもらったりしながら片付けて、だいぶきれいにはなりました。ただ地盤沈下のせいで、かやぶきに適した茅はまだ4割ぐらいしか戻っていません。なんとか再生するための署名運動などもお願いしています。

 何が良いかというと「里川」なんですよ。人の手が入ることによって維持されている景観だし、文化でもある。ヨシ原は地元の共有財産で、秋にわたしたちが権利を購入する。そのお金は集会所の修繕やお祭りに使われて、コミュニティーを活気づけていた。

「ライフ」のランキング