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【書評】埼玉大名誉教授 長谷川三千子が読む『小林秀雄の後の二十一章』小川榮太郎著  刊行自体が一つの「事件」

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【書評】
埼玉大名誉教授 長谷川三千子が読む『小林秀雄の後の二十一章』小川榮太郎著  刊行自体が一つの「事件」

 この本の出現は、まさしく一つの「事件」である。いまどき正字歴史的かなづかひの、五四二頁に及ぶ文芸批評の本が、美しい装丁の箱に入つて出版されたりするのは稀有(けう)の出来事だ、といふだけの話ではない。その重厚な形式と一体になつた、力に満ちた文章の出現--これが「事件」の核心なのである。

 一言で言へば、ここには〈読まれるべき言葉〉がある。

 この〈読まれるべき言葉〉といふ表現は、著者が水村美苗氏の『日本語が亡(ほろ)びるとき』のうちから取り出してきたキィワードである。それをひき継ぐことに失敗したとき、日本語は亡び、日本の知は亡ぶ。さうならないためには、「日本の国語教育はまずは日本近代文学を読み継がせるのに主眼を置くべきである」とする水村氏の処方箋を、著者は満腔(まんかう)の賛意をもつて紹介する。

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