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【書評】音楽ライター・富樫鉄火が読む『ミシェル・ルグラン自伝』

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【書評】
音楽ライター・富樫鉄火が読む『ミシェル・ルグラン自伝』

「ミシェル・ルグラン自伝」

 ジャック・ドゥミ監督と共に名作『シェルブールの雨傘』を生み出していくサクセス・ストーリーは圧巻だが、すべてが順風満帆ではない。スティーブ・マックイーンの遺作となった『ハンター』に、彼はバロックとロックを合成した、ユニークな音楽を書いた(面白い音楽なので、一度お聴きいただきたい)。しかし製作会社はそれを受け入れず、別人に書き直させ、2種類のバージョンで公開された。それでもルグランは落ち込まない。「サプライズのない音楽を期待するなら、私に声をかけても無駄である」。常に前向きでパワフルな彼の生き方は、実に心地よい。読んでいると元気が出てくる。ジャンルを越境する面白さと爽快感でいっぱいだ。

 訳文は読みやすく、巻末索引も細かくて、本書の実用性を高めている。一部はサントラ解説や監修者の既刊でも紹介済みだが、マニア垂涎(すいぜん)の秘話が満載。ルグランのファンのみならず、映画と音楽双方のファン必読の名著である。(ミシェル・ルグラン著、高橋明子訳、濱田高志監修/アルテスパブリッシング・2800円+税)

 評・富樫鉄火(音楽ライター)

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