産経ニュース

【編集者のおすすめ】物事のエッセンスを衝く 『富良野風話 日本人として』倉本聰著

ライフ ライフ

記事詳細

更新

【編集者のおすすめ】
物事のエッセンスを衝く 『富良野風話 日本人として』倉本聰著

(財界研究所・1500円+税)

 「日本人は一体どうなってしまったのだろう。絆という言葉はどこへ行ったのだろう」-。作家・倉本聰さんの最新刊『富良野風話 日本人として』の一節に、日本人の生き方をとことん考え抜いてきた末の思いが表れている。

 総合ビジネス誌『財界』に連載中の「富良野風話」から東日本大震災以降の文をまとめた著作。東京生まれの倉本さんは自然の懐に抱かれた北海道・富良野に生活の拠点を移し、シナリオ作家としてテレビ「北の国から」や「風のガーデン」など数々の話題作を送り届けてこられた。

 東京からの発信が中心の状況下、地方からの情報発信は難しい。倉本さんは富良野から発信し続け、多くの人たちの耳目をひきつける。発信する内容がことごとく物事のエッセンス(本質)を衝(つ)いているからにほかならない。

 本書のテーマにも鋭さがうかがえる。『無主物』『不利益の分配』『御神木(ごしんぼく)』-。ついつい引き込まれる言葉が並ぶ。たとえば『島』の節では、カナダ西海岸・北緯54度のハイダの地が登場。倉本さんは毎年のようにここを訪れこの地の先住民と対話を重ねてきた。彼らには土地を“所有する”概念がないという。

 今日の国々のように、領有権を主張するのではない。長年その土地で自然の恵みを享受してきた中で、住民たちは「ゆえにその地の自然を大事にし、自然の保全に最大限の気を遣(つか)う」と記述。

 国家のメンツと別次元の、人として生きるうえで何が大事かを読んでいて考えさせられる著作である。(財界研究所・1500円+税)

 『財界』主幹 村田博文

 

「ライフ」のランキング