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【書評】ノンフィクション作家・大野芳が読む『戦火のマエストロ 近衛秀麿』菅野冬樹著

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【書評】
ノンフィクション作家・大野芳が読む『戦火のマエストロ 近衛秀麿』菅野冬樹著

「戦火のマエストロ 近衛秀麿」

ユダヤ人の逃亡を手助け 

 指揮者・近衛秀麿が遺(のこ)した文化遺産は、なんといっても来年創立90周年を迎えるNHK交響楽団であろう。戦後、在京の交響楽団すべての創立に関与したが、残念ながらその名を知る者は少ない。

 貴族院議長だった近衛篤麿の次男で、長男は首相をつとめた文麿。学習院中等科に在学中、山田耕筰について作曲を学んだ秀麿は、東京帝大の中途でドイツの音楽学校に遊学。指揮者に転向、帰国して日本初のプロのオーケストラ「新交響楽団」を結成した。それが今日のN響である。

 以来、数々の名曲を紹介し、海外から名演奏家を招いて日本に西洋音楽を根づかせた伝道者でもある。

 10年あまり楽団経営に携わった秀麿は、活動の場を欧米に求め、90余の交響楽団を指揮した。戦後、小澤征爾が行く先々で、「ここへ来た日本人は、あなたが2人目だ」とよく言われたという。

 外交特権を与えられた秀麿には、別の顔があった。ナチスに席巻されていたドイツにおいて、迫害されたユダヤ人の国外逃亡を手助けした逸話を追究したのが本著である。

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