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【聞きたい。】小野寺史宜さん『その愛の程度』 苦い人生の変転、軽やかに

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【聞きたい。】
小野寺史宜さん『その愛の程度』 苦い人生の変転、軽やかに

小野寺史宜さん

 「いつかは…と思っていたけど、『愛』というテーマを意識して書いたのは初めて。これまでの僕の小説とは装丁も全然違った感じになりました」

 来年でデビューから10周年。サッカーや音楽を題材にした青春小説で知られる作家が、家族と愛のかたちを模索する普通の大人たちの姿を描いた。

 主人公は日用品メーカーに勤める豊永守彦、35歳。離婚経験がある年上の妻、血のつながりがない娘の菜月との仲も悪くない。そんなある日、妻の職場の親睦会での川遊び中、ゴムボートから菜月と友達が転落。助けるためにとっさに川に飛び込んだ豊永が、必死になって抱き上げたのは菜月ではなく、友達の留衣ちゃんの方だった。

 「お父さんはたすけてくれなかった」-。大学生に助けられた娘は以後口をきいてくれず、平穏だった生活が急にきしみ始める。結婚、別居、離婚…。人生の変転を経験しながら、豊永はこれまで自身が相手に寄せてきた愛の強さを考える。

 「愛についても、あるかないか黒か白か、とはっきりと決められるわけではない。その『程度』が強いか弱いかによって受けとめる人の印象は変わってくると思う。その辺を、愛に限らずに書いてみたかった」

 重い話になりがちな苦みのきいた素材を軽やかにつづる。東京の臨海部や銀座界隈(かいわい)のカフェといった舞台装置も丁寧に描いた。

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