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【書評】批評家・西村幸祐が読む『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』 日本人の関心を呼ぶ理由は…

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【書評】
批評家・西村幸祐が読む『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』 日本人の関心を呼ぶ理由は…

『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』エマニュエル・トッド著、堀茂樹訳(文春新書・800円+税)

 フランス人によるドイツ批判の本書が、なぜ日本人の大きな関心を呼んでいるのであろうか。恐らく3つの理由がある。第1は、世界がいま大きな歴史的転換期にあると自覚するか、薄々そう感じている人が増えているからだ。これまでの世界の枠組みが大きく変化することへの知的好奇心と不安に応えてくれるのではないかという期待である。第2は、旧態依然とした日本のジャーナリズムの閉塞(へいそく)状況に飽きた人々にとって、何か新しい切り口が見えたからだろう。例えば冒頭の、ロシアが元CIA職員の《スノーデンを迎え入れることができて、逆説的なことに、結果的には西欧における市民の自由の擁護に貢献している》というくだりは新鮮だ。これはフランス人特有のただのレトリックではない。

 そんなロシア擁護が単純な反米論の文脈で語られるわけはない。そこがエマニュエル・トッドの真骨頂である。〈親米左翼〉を自任するトッドは、建国の精神を尊重するという意味で、米国はデモクラシーの擁護者である、という立場を堅持する。そのデモクラシーはフランス革命から始まる、つまり近代の西欧型〈民主主義〉に他ならない。かといって、彼は古臭い教条主義者でもない。米国外交を牽引(けんいん)してきた政治学者のブレジンスキーを評価するリアリズムに根ざしている。

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